子ども達の心の窓を開く「いのちの授業」
「命(いのち)の授業」
日本の年間自殺者は21,881(出展:令和4年中における自殺の状況 厚生労働省、警察庁:令和5年3月14日)。
その内、19歳までの少年の自殺者数は796人であった。
又、いじめの認知件数は615,351件、不登校児童生徒数及び不登校生徒数は295,925人(出展:『出展:令和3年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査結果について」:令和4年10月27日 文部科学省初等中等教育局児童生徒課』)であることが報告されております。
悲しいことに年を追うごとに、それぞれ、若者の数が増えております。
本来、生き抜く力を持っている子ども達が、様々な社会的要因を受け、様々な困苦に出会っていきます。個々の力だけでは対応困難な、こうした社会的状況と向き合っている子ども達、また今後向き合うかもしれない子ども達を含め、全ての子ども達に、それぞれが既に心の中に持っている、生きる意味、生きる価値、生きる力に気づいて頂くための場を提供することの重要性を強く認識したのです。そのため、子ども達の世界へ直接働きかけることが重要だと判断し、教育機関に出向き、いのちの授業の取り組みを始めました。
<心の中から引き出す授業>
教育機関に出向き、授業を行う中で、子ども達からの直接的な言葉、また、子ども達から届いた手紙を通して多くの気づきを、私は頂いたのです。その中で最も重要な気づきの一つとして、「命、人権、道徳」に関しては、一方向的な講演形式では、子ども達の心に届かないということです。特に、教えようとしたり、言葉だけで伝えようとしたり、或いは理解させようとしたりすることは、子ども達の心を、「命、人権、道徳」から、むしろ遠ざけてしまうのです。
子ども達からは、次の様な思いが手紙で届いております。ご覧ください。(掲載に関しては学校側の了解を頂いております)
『お話を聞かせて頂いて、「いのちとは教えるものではなく、伝えるものでも、理解させようとするものでもない」というフレーズが一番心に残りました。今まで聞いた命の話は、「命とは大切なものだから、大事にしないといけない」ということを教えるものばかりでしたが、授業でのお話はそうではなくて、そんな言葉は使わずに、命の大切さを感じられるものだったと思います』
『小学校、中学校と命についての授業を受けてきましたが、今までの授業は「教える」という事が普通でした。しかし、今回の授業では、「教える」のではなく、「考える」という事を第一にしたお話だったので、改めて、命とは何なのか、なぜ命を大切にするのかと、普段は考えることのないことを考える機会になりました』
『「いのちの授業」と言うことで、又、いつもの様な押し付けの講演だと思っていた。実際、受講するとそうではなく、自分たちの思いを尊重し、引き出してくれる場であったので、前向きに聞くことが出来ました』
『僕は今まで、人権集会や人権学習で「いのち」と言う事を学んできました。しかし、今日の授業で、「命は知識として教えるものではな
い」ということを聞いて、今までの自分にあった「いのち」というものが、色々な人によって作られたものであって、自分が思う命ではな
かったことに気づきました』
等々の手紙を、全国の数多くの子ども達から頂いております。
全国延べ約700校で実践して参りました経験で、子ども達の本質は、「命」に関しては完璧な存在だと気づくことが出来ました。言い換えますと、子ども達は、大人の想像をはるかに超えるところで、「命」の意味に、心の中で既に気づいているということです。しかし、生活を送る中で、そのことが意識の中で少しづつ忘れ去られていくのです。一方で、心の中には『命」の思いが潜在し続けているのです。この様な状態に触れて、大人の受け止め方は、「子どもだから、体験も少ないし、考えてもいないだろう、だから教えることが大事だ」、というものになりがちではないでしょうか。しかし、授業の中で、小学校低学年の子ども達に、「いのちは何だと思いますか?」と問いかけると、次のように答える子ども達が出てくるのです。「かけがえのないもの、心、神様から頂いたもの、絆、勇気、感情、感謝、時間、希望、愛・・・」、そして大きなショックを受けた言葉があります。それは、「僕は、生きる意味が分かった、それは本気で生きることだよ」、「何のために生きるかを考えること」。如何でしょうか。勿論一部の子ども達ではありますが、他の子ども達の多くも、発信された言葉を知っている、意味もだいたい分ると答えてくるのです。既に低学年、1年生、2年生でも、この様な命に対する思いを心の中に有しているのです。質問を投げかけることがあまりない大人社会が、そのことに気づいていないだけなのです。
このような体験を通して、私は思うのです。「命」を教え、伝え、理解させようとするのではなく、子ども達の心中から引き出していくことが大切なのです。この思いを持ちつつ、子ども達と本気で触れていくことで、子ども達は心を開いてくれることを、8万人の子ども達との触れ合い、そして、全国4万人の子ども達から頂いた手紙を通して認識することが出来たのです。
教え、伝えるのではなく、子ども達の心の中から引きだす場を提供することで、子ども達は、心の中に内在する「命」への思いに自ら気づいていきます。教えられた、或いは理解させられた「命」の意味は知識として記憶に残る形となり、それが記憶だけに、心の中に届かないばかりか、何時かは薄れていきます。しかし、自らの気づきによって創出された思いは、自らがそれぞれの心の中から引き出したものであるが故に、忘れることはありません。何故なら、潜在的に眠っている心の思いに気づくと同時に、自分自身が既に、「命」への大切な思いを有している存在だと言うことに気づくからです。
<命(いのち)の授業、三つの視点:三つの学び>
「命の授業」は三つの視点を前提に置いております。以下の図をご覧下さい。
一つ目は、子ども達に真実に触れて頂くことを念頭に置いております。
触れて頂く事項に関しましては、私自身が多視点で調査・理解した上で、曖昧さが無い様に説明することを心掛けております。曖昧さを抱えたまま説明した場合には、こちらの心の在り方を簡単に子ども達から見抜かれてしまい、そっぽを向いてしまう経験を初期段階では幾度となくして参りました。想像を超える程の、相手の心を見抜く子ども達の力に気付かせて頂きました。
二つ目は、気付きを与えるということです。
教えたことは知識として記憶されますが、知識の範囲を超えるものとはなりません。一方、自らの気づきによって触れたことに関しては、知識が知恵に変容して参ります。知恵は知識のように時が経つうちに朧気になってしまうようなものではありません。
心の中に住み続けて行くものであります。そればかりか、様々な出来事を通して、膨らみ続けるものです。
三つ目は”変革”を促すと言うことです。
気づきから得た知恵は、人の心を動かし、行動を起こす力の源になります。これに依って、子ども達の心の中に行動を起こす意識環境が創出されて参ります。行動を起こす心の変化を、子ども達が自ら気づく環境を提供する事であります。そして、感動的な話を伝えて終わってしまうものではありません。
以上のプロセスを「いのちの授業」の中で展開することで、子ども達が今まで意識していなかった「命」の本質に触れて頂き、「命」の視点で社会をより良い方向に改革する行動を起こす、正にパラダイムシフトの実現を図ろうとする思いを「いのちの授業」に込めております。
<命(いのち)の授業の概要>
次に、「いのちの授業」の基本プログラムの概要を以下の図に示します。過去の実績として、45分間~3時間の授業まで、又、一回の授業で終了~複数年間にわたる継続授業まで、様々な形を取らせて頂いております。
「いのちの授業」の基本プログラムは90分となりますが、プログラムの時間帯及び実施回数等に付きましては、学校側とのご相談により、決めさせて頂く形となります。
1.子ども達からの学び
「命」は心の中から引きだすもの(「命」の思いは人それぞれ、教え、理解させようとするものでない)
2.出会い・三つの学び(絆、命のリレー、心の成長)についての話。
・出会い:人は出会いによって成長する。出会いの大切さに触れる。
・絆:絆の形を子供達に作ってもらい、絆が強く結べる心の姿を一緒に考える。
・「命」のリレー:一人ひとりの命は、数え切れない人から頂いた命であり、自分自身も「命」を未来に向かって繋いでいく役割を持って
いる事に気づいて頂く。
・心の成長:一人ひとりは、全ての「命」や地球環境によって生かされている存在であることに気づいて頂く。
3.「命」の大切さ
・“「命」とは何か”、についての対話。
・隣通しで握手をして頂いて、相手の「命」に触れた感想を聞く。
・聴診器で、「命」の鼓動を聞いて頂く。どんな鼓動の音がしたのか、どんな思いを持ったのかを発表してもらう。
4.心の瞳で生き抜く子ども達
・7歳で、癌で亡くなった生徒さんの生き方と家族の絆
・13歳で、癌で亡くなった大牟田市に住んでいた猿渡瞳さんが、亡くなる前に命を掛けて行ったスピーチを紹介し、子ども達に朗読して頂く。ご家族の方々からお聞きしたエピソードを逐次付加。
「命」に対して13歳の少女が命にどのように向き合ったのか、その深い心のあり方に触れて頂く。
・東日本大震災を通して、悲しみと辛さを持ちながらも、前向きに生きようとしている子ども達の「命」のメッセージに触れ、生きる意味、そして生きる価値を心にとめて頂く。
<「いのちの授業」過去の実績>
「いのちの授業」は、2007年に立ち上げ、2016.12.20までは、企業に在籍し、社会貢献の一環として実践をして参りました。
広く社会からのご要請にお応えすべく、2016.12.26、NPO法人いのちの教室を立ち上げ、現在に至っております。
2021.8現在で、延べ、約700機関・団体(幼稚園~大学、PTA、一般)、約80,000名を対象に実施して来ております。一般の方々には講演の形で行っております。
又、対象校には、ユネスコスクールも数多く入っております。
<授業をきっかけに動き出した子ども達>
・子ども達が作った「エコプロダクツ」ブース
いのちの授業を開始した4年後、2011年には、いのちの授業を行ったその延長線上で、国内最大級の環境展示会「エコプロダクツ」へ、
小学校では全国で唯一の出展を果たした学校が神奈川県にあります。
会場では小学校1年~6年生までの児童たちが、通りかかるまったく知らない大人に向かって自分たちの想いを伝えている姿がみられまし
た。
・いのちの授業は“聞いて終わりではいけない”と考えております。
授業を受けた子供たちが命を大切するためのそれぞれの行動につながって、初めて価値があります。子ども達への影響はこれだけでは
なく、授業を受けた子ども達の中には命の大切さを学び、劇的に変わる子どもも多くおられます。
・授業の後に子ども達から頂いた手紙は約4万通に上ります。
手紙の中には、「自殺を思いとどまった」「これまでいじめをみてみぬふりをしてきたけど、これからは勇気を出してやめさせたい」
といった内容のものが多くみられます。先生方にも話していない個人的な話をしてくれる子どももいます。
いのちの授業を通じて自殺を思いとどまり、生きる決意を持つことが出来た子ども達は、4万通の手紙の中、そして直接伝えて来てくれた
人を含め、約400人近くに及びます。
多くの子ども達の命を救えるきっかけを作れたこと、これ以上の喜びはございません。
当法人は、子ども達の命を守るため、「いのちの授業」を今後も力強く継続して参ります。
いのちの授業に寄せられた手紙
(「担任、小学生、中学生、高校生、保護者」 一部ご紹介。以下、学校側から掲載のご了解を頂いております。)
<ご担任>
命の授業は、いつも子供たちの転機となっていました。それは、学習を始めるきっかけ、学習に対する自信がなくなっていたときの意欲づけ、新しい視点の発見でした。
いつも、一緒にいる担任だけでなく、若尾先生に教えていただくことや認めていただくことで、子供たちは学習に対する意欲をもったり、自信をつけたりしていく様子がありました。
<高校生>
この世に私という存在は一つしかない。
命は一度だけと自分が生きている価値の大きさが分かりました。
私も本気で生きていこうと思います。
この世に小さな命を授けてくれた親に感謝の意気持ちを忘れず、本当は、生きたかった人の分まで全力で生きていきます。
<中学生>
「いのちの授業」を受けて、普段考えることのない命について考えさせられました。
これからは本気で生きていこうと思いました。命は一つしかないものでとっても大切なものです。
これから私は、命を落とす人が少なくなるように、いじめや差別の問題などがあれば、積極的に止めていきたいです。
次にこういう機会があれば、もっと「命」について詳しく知れたらいいなと思いました。
そして、教えてもらったことをいろいろな人に伝えていきたいです。
<小学生>
「いのちの授業」を受けて、この世界を変えていきたいと思った。
小さくても、大きくても、汚くても、綺麗でも、一つ一つの命がもっているその光景を輝かせていきたい。
心の奥に残るものを若尾さんから学ばせてもらいました。
これから先、生きていく上で大きな大きな支えとなるものを頂いて、感謝しています。
この思い出を胸にしまって一歩一歩前に進んでいきます。
<小学生>
昨日はいのちの授業をして頂きありがとうございました。
僕は昨日、死のうかなとか、自殺しようかと考えていました。
なぜかというと、いじめです。
でも、若尾先生のおかげで自殺はやめました。
死んだら家族や沢山の人が悲しむから。
若尾先生は僕の恩人です。
本当にありがとうございます。感謝しています。
<保護者>
「命の授業」の講演を受講して、改めて、家族やたくさんの人に命の大切さ、ありがたさを伝えていこうと思った。
本日は参加して本当に良かったです。
少しでも誰かの力になれる人になりたいと思う。
<保護者>
「いのちの授業」の講演を聴き、命について改めて考えることができた。
日常生活を送る上で、当たり前と思っていたことが、どんなに大切なことか、気づかされた。
今、このときに感謝し、命の大切さを感じながら生活を送っていきたい。
世の中に起こっているいろいろな問題にも、自分ができることを見つけ、生きている証しを見つけていきたい。
過去、全国、約4万人の子ども達から感想文ではなく、手紙という形で思いを綴って頂いております。子ども達からは、様々な思いが届いております。その中で、多く寄せられた手紙として、
・身近な人が亡くなったりした体験がないので、やはり命の大切さは感じ難い。授業や講演の中では、一方的な話ではなく、私たちが
参画し、考える場を頂くことが必要。
・教えてもらう場ではなく、命を考える場が、もっと、もっと欲しいし、授業を継続することで、命への思いが深まっていく。
・命を絶とうと思っていた、この授業を受けて、生きる意味や価値に触れることが出来たので、自ら命を絶つのは止めました。
という手紙が、それぞれ、全国から数多く届いております。特に衝撃を受けたのは、全国、約400人近い子ども達(小学校、中学校、高校)から、上記、小学生の手紙でご覧頂けますように、『命を絶とうと思っていた。この授業を受けて、生きる意味、生きる価値に触れることができたので、これから頑張って生きていきます』。という、手紙及び授業の中での発言を通して、心の思いを頂いたことです。
400人近い子ども達の命を救えるきっかけを作れたことに、今思いを寄せています。これからも、子ども達の心の中にある思いを尊重し、心の中から引き出し、そして、自ら考え、気づき、そして発言する授業を通して子ども達の心の成長を実現すべく、私の命の続く限り、心と心の触れ合いを持たせて頂きたいと思っております。